この記事の要点
- 仕事の集中力やストレスに対し、運動が何らかの影響を与えることが報告されています。
- 仕事の集中に関するエビデンススコアは59(中程度)です。
- ターゲットは子どもから高齢者、医療従事者まで多岐にわたっています。
運動とは、身体を動かす行為です。
身体活動の一種として、さまざまな文脈で扱われるものです。
運動が仕事中のパフォーマンス、特に「集中力」にどのような影響を与えるのかについて検討した研究があります。ここでは2件の研究報告を紹介します。
まず一つ目は、子どもたちを対象とした研究です。この調査では243名の子どもたちが参加しました。具体的には、135名の介入群と108名の対照群が用意された(参加者をランダムに分けて効果を比べる、信頼性の高い研究方法)が行われています。教室でのプログラムとして体を動かす取り組みを実施したところ、作業に集中して取り組む行動が向上するという報告がありました。つまり、授業中に体を動かす仕組みが、作業への集中に関連している可能性を示しています。
もう一つは、高齢者を対象とした研究です。手術を受けた22名という小規模なグループを、14日間という期間で追跡した(特定の集団を一定の期間、継続的に観察する調査方法)が行われました。この研究の結果では、術後の身体活動レベルが高い人ほど、注意力の低下が少ない傾向があることが示されています。ここでいう注意力とは、ボトムアップ的な注意(外部からの刺激に対して意識が向けやすくなる仕組み)のことを指しており、活動的な状態がこうした意識の向けやすさに影響を与えている可能性が報告されています。
次に「仕事のストレス」との関連についてです。この分野については4件の研究がありますが、状況によって結果が異なることがわかっています。
まず、医療従事者を対象とした研究があります。これまでに実施された41件のRCT(参加者をランダムに分けて効果を比べる、信頼性の高い研究方法)に基づいた(複数の研究の結果を統計的に統合して解析する手法)では、介入によって短期的なストレス症状が軽減される可能性が示唆されています。また、医学生11500名を対象とした系統的レビュー(あらかじめ決めた基準に沿って論文を集め、まとめて分析する手法)においても、身体活動が燃え尽き症候群やQoL(生活の質、健康で充実した生活を送れているかを示す指標)と関連していることが報告されました。
一方で、注意が必要な結果を示した研究もあります。8716名の労働者を対象とした横断的研究(ある一時点での状態を調査して関連を調べる方法)では、仕事中における激しい身体活動は、かえって仕事のストレスを高めたり、満足度を下げたりすることに関連しているという報告がありました。また、別の研究では、高いレベルの身体活動がリスクを79%や84%低減させるという結果も示されています。このように、運動の内容や状況によって、ストレスへの影響は一様ではないことがわかります。仕事のストレスに関するエビデンススコアは48(限定的)です。
| 研究 | デザイン | 対象者数 | 期間 | 主な結果 |
|---|---|---|---|---|
| Medicine(2025・PMID:40898551) | コホート研究 | 22名 | 14日間 | 良い影響が報告された |
| Medicine and science in sports and exercise(2006・PMID:17146314) | ランダム化比較試験(RCT) | 243名 | 不明 | 良い影響が報告された |
| The Cochrane database of systematic reviews(2023・PMID:37169364) | メタ分析 | 11119名 | 不明 | 良い影響が報告された |
| International journal of environmental research and public health(2021・PMID:34769739) | 横断研究 | 8716名 | 不明 | 悪影響の可能性が報告された |
| Frontiers in public health(2024・PMID:39529708) | 横断研究 | 100名 | 不明 | 良い影響が報告された |
| The clinical teacher(2022・PMID:36052814) | システマティック・レビュー | 11500名 | 不明 | 良い影響が報告された |
どんな人を対象にした研究?
対象者には、下肢整形外科手術を受けた65歳以上の高齢患者22名、小児243名、医療従事者11,119名、18歳から65歳の労働者8716名、100名の参加者、および医学生11,500名が含まれています。
対象者の属性が多岐にわたるため、自身の状況と照らし合わせて検討する際の材料となります。
注意点・限界
本件の研究は合計6件の報告に基づいています。
研究デザインは、メタ分析(メタアナリシス)や、ランダム化比較試験(RCT)、コホート研究など、複数の形式が含まれています。
また、仕事のストレスに関しては、結果に矛盾がある研究も報告されています。
運動は仕事の集中にどのような影響を与えますか?
運動は仕事の集中に良い影響があるという研究が報告されています。これには、ランダム化比較試験(RCT)やコホート研究が含まれ、信頼性は中程度です。
仕事のストレスと運動にはどのような関係がありますか?
運動は仕事のストレスに良い影響があるという報告があります。一方で、激しい身体活動がストレスを高める可能性を示唆する研究もあります。
医療従事者や学生における運動の影響は?
医学生や医療従事者を対象とした研究が行われています。それらの研究において、運動がバーンアウトやストレスに関連していることが報告されています。
これまでの6件の研究から、運動は仕事の集中力やストレスに対して、さまざまな形で関わっている可能性が示唆されました。ただし、ストレスについては状況によって異なる結果も出ているため、一概にどのような運動がどう影響するかを断定するにはまだ研究が必要です。今回の内容は限られた数の研究に基づいています。ご自身の働き方に合った方法があるか、セルフチェックで確認してみましょう。

